海の命の授業5時間目。最後です。
○「興奮していながら、太一は冷静だった。」から最後まで黙読をしましょう。
(黙読)
○「興奮していながら、太一は冷静だった」というところに、太一の技量が抜群だという証拠があるね。普通は興奮していれば冷静にはなれない。しかし、太一は念願の巨大なクエに出会って興奮しているけど、魚を獲るということにかけては冷静に獲物をねらうわけです。こういうことができるというところが、太一の技量が抜群だという証拠です。
○200ページ1行目までを読んでもらいましょう。××君。
(音読)
●今読んだところに、太一の父親が死んでしまった原因の一つが書いてあるんだけど、なんだか分かりますか? 太一の父親は技量抜群だったから、死ぬようなことはないはずなのに死んでしまいました。それはどうしてなのか、疑問が残っていましたね。その原因、死因が書いてあります。何でしょうか。ノートに書いてみましょう。
・「太一は鼻づらに向かってもりをつき出すのだが、クエは動こうとはしない。」 それくらい大きな魚だから、太一の父は技量抜群だったけど、獲ることができなかった。
・太一は永遠にここにいられるような気さえした。 「永遠」と書いてあったから。
○死は永遠だからね。
○二人のうちのどちらかが合っています。どっちだと思いますか、ノートに名前を書いてみよう。
(ほとんどがBを選択)
○そうですね。永遠にここにいられるような気さえした、とありますが、普通、海の中にずっといられると思いますか?(思わない)思いませんよね。なのにどうしてそう思うのでしょうか。
○これはね、この巨大なクエの魅力ですね。クエのもつ不思議な力。そういう不思議な魅力にやられてしまっているのではないでしょうか。だから、あの技量抜群の父もいつの間にか水中でなくなってしまった。また、そういう不思議な力をもったクエだということが言えますね。
○201ページ3行目までを読みます。(範読)
●さて、太一はこのクエをとりたかったのでしょうか、それともとりたくなかったのでしょうか。
A とりたかった
B とりたくなかった
AかBかをノートに書いて、その理由も書いてください。書けたら見せにきてください。
A 18人
B 10人
○Bだと考えた人に理由を発表してもらいます。
・「この大魚は自分に殺されたがっているのだと、太一は思ったほどだった。これまで数限りなく魚を殺してきたのだが、こんな感情になったのは初めてだ。」と書いてあるので、そう思うということはクエをとりたくないと思っている。
・「この魚をとらなければ、本当の一人前の漁師にはなれないのだと、太一は泣きそうになりながら思う。」と書いてあって、とらなければならないと思っているけど、泣きそうになっているから、とりたくはないと思っている。
・「『おとう、ここにおられたのですか。また会いに来ますから。』こう思うことによって、太一は瀬の主を殺さないで済んだのだ」と書いてあって、殺さないで済んだからとりたくなかった。
・大魚はこの海の命だと思えたから、とりたくなかった。
○Aの人で反論したい人いますか?
・この魚をとらなければ、本当の一人前の漁師にはなれないのだと、太一は泣きそうになりながら思うというのは、それだけ父のような漁師になりたいということで、父を目指すためにはこのクエをとらなければならないから、とりたい。
○うん、太一は父にあこがれ父を追って漁師になった。そして今、念願だった巨大なクエに遭遇した。このクエを獲って父のような漁師になりたいと思っている。だから獲りたいということだね。Bの人、どう?
・でも、本当に獲りたいと思っているなら、泣きそうになりながら思うっていうことはないと思う。
・ちょっと付け足して、このクエにはすごい魅力があるから、そういうクエを獲ってしまうということは太一は納得できないのだと思う。
○じゃあ、申すこしAの人の反論を聞こう。
・「こう思うことによって、太一は瀬の主を殺さないで済んだのだ」と書いてあって、殺さないで済んだということは、本当は殺さなければならないと思っていたけど、殺さないで済んだということで、殺したいと思っていたこと。
○うん。殺さない済んでよかったってことは、殺さなければならないとはじめは思っていて、それが嫌だったので殺さないで済んで喜んでいるっていうことだからね。
(子どもらが、どっちかまよっているつぶやき)
○Aの人もBの人も、殺さなければならないけど、殺したくない。殺したくないけど、殺さなければならない。こんなふうに太一の心の中で葛藤があるっていうことは分かるよね。だから、簡単には決められないわけです。太一の心の中で、クエを殺すか、殺さないかが攻め合っているわけだね。
●その攻め合っているものは、別の言葉で言うと何だろうね。どんな言葉で表せるか考えてノートに書いてみよう。やや抽象的な言葉でもいいよ。
・欲と精神
・自分の夢とクエ(海の命)
○父を倒したクエをしとめて父のような漁師になりたいという自分の欲が、漁師としての精神と攻め合っている。クエを殺して父親のような漁師になるという個人的な夢ばかりを考えていた太一が、海の命という大きなものを考えるようになって、その両者が攻め合っている、そんなふうに考えられるね。
○太一の気持ちが変わったところがあるけどどこだか分かる?
・水の中で太一はふっとほほえみ、口から銀のあぶくを出した、というところ。
○そうですね。銀のあぶくの銀というのも象徴ですね。銀っていいイメージがあるでしょう? きれいですがすがしい。太一が銀のあぶくを出したということは、太一の中でもやもやがすっきりとしたということですね。
○この海の命という物語は、自分の欲望のために生きてきた太一が、もっと素晴らしいものに気付く、自分の夢だけをおいかけてきた太一が、個人を超えたもっと大きな海の命に気付く、そういうふうに太一が成長をしていくという、そういう物語ですね。
○だから、最後に、「巨大なクエを岩の穴で見かけたのにもりを打たなかったことは、もちろん太一は生涯だれにも話さなかった。」と書いてあるんです。ここに「もちろん」と書いてある。どうして「もちろん」なのか、こんなことも考えてみるといいですね。
○それではこれで、海の命の勉強は終わりです。ありがとうございました。
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