★準備と練習が大切だということは誰でも分かっている。しかし、準備と練習には時間も手間もかかり、ついおろそかにしてしまうことがある。例えば、1分間スピーチをやるクラスは多くても、その練習を課しているクラスは少ない。練習の有る無しで結果は違う。練習や準備の大切さを改めて話したい時に。
もう15年くらい前です。
阪神というプロ野球のチームに、新庄剛志という選手がいました。
おもしろい話や動作でとても人気のある選手でした。
ただ、新庄選手はその後アメリカのメジャーリーグで4番を打ったこともあります。
人気だけの選手ではありませんでした。
その新庄選手のいる阪神が巨人と戦った時のことです。
4対4の同点のまま延長戦になったのですね。
延長12回裏の阪神の攻撃です。
1塁と3塁にランナーがいました。
ヒットが出ればサヨナラ勝ちという場面です。
ここに登場したのが新庄選手でした。
新庄選手はこの日、ホームランも打っていてすごく活躍していました。
だから、巨人は新庄選手に打たれないように、敬遠という作戦をとったのです。
敬遠というのは、バッターが打てないほど遠くにボールを投げて、フォアボールにしてしまうことです。
1塁には出られてしまいますが、ヒットを打たれるよりはましだということですね。
2つのチームの選手も見ているお客さんも、それは当たり前のことだと思って見ていました。
新庄選手はフォアボールで1塁にいくだろうと誰もが思っていたのですね。
でも、何と。
新庄選手はバットが届かないくらい遠くに投げられた敬遠のボールを、大きく踏み込んで打ってしまったのです。
結果はヒットです。
こうして阪神は巨人にさよなら勝ちをしました。
このシーンを見て、多くの人は、新庄選手がまたおもしろいことをしたといって、大変盛り上がったんですね。
でも、このシーンが生まれたのは偶然ではなかったのです。
新庄選手はこの何日か前の試合でも敬遠をされていました。
そこでコーチに、「今度敬遠された時、打てそうだったら打ってもいいですか」と聞いていたのです。
そして「もしも打っていいなら、帽子を2回取って合図してください」とお願いしていたそうです。
しかも、バッティングの練習のときに、ピッチャーに敬遠する時のようなボールを何球か投げてもらい、それを打つ練習もしました。
そうしたところ、その何日かあとに巨人戦がやってきたわけです。
新庄選手はこう考えました。
「敬遠のボールとは言っても、そんなにとんでもなく遠くに投げるわけではない。
最初にバッターボックスの後ろに立っていれば、バッターから離れたところに投げても、ホームベースからはそんなに遠くにならないはずだ。
だから、バッターボックスの後ろに立って最初の球は見送ろう」
そう考えて、コーチの方を見ると、コーチが監督と相談した後、帽子を何度も取っていたそうです。
このサインを見て、新庄選手は敬遠のボールを打とうと決めました。
そして、1球待って2球目。
思ったよりも遠かったそうですが、右足を前に踏み込み、さらに左足を前に踏み込んで見事にそのボールを打ったのです。
才能とトリッキーな動きで野球をやっているようにとられがちだった新庄選手ですが、理屈と練習はきちんとやっていたということですね。
私たちは、どうしても面倒に思って、事前に練習をしたり準備をしたりすることをなまけてしまうことがあります。
でも新庄選手のように、もしもそうなったら、という場面に備えて、準備をしたり練習をしたりすることが大切なのではないでしょうか。
いつでも、準備と練習を忘れない、こういう気持ちで取り組むことが成功の第一歩でもあると先生は思いました。
皆さんも、1分間スピーチとか、テストとか、学習発表会とか、終業式の作文発表とか、いろんなことがあると思いますが、その前に準備と練習をきちんとやっておくことがとても大切なことだと思います。
ぜひ覚えておいてくださいね。
ちなみに、新庄選手がボールを打った時に、足がバッターボックスから出ていてアウトではないかと言う人が結構いたそうですが、ルールでは足が全部出なければセーフだそうです。
新庄選手の足の一部はちゃんとバッターボックスに残っていたそうです。
https://www.youtube.com/watch?v=n_OUgCj3Ujchttps://www.youtube.com/watch?v=HJhnEZmDU1g
本になりますね。
出版されたら欲しいです。