「ちょっといい学級を作る18のSTEP」
~学級作りについて、まとまったものを書いています~
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│9 ひとりひとりを理解しよう ⑤毎日チェック
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「山下さん、おはよう」
「おはようございます」
「どうしたの? 元気なさそうだけど」
「え? そんなことないです」
「そう? 調子がよくないのかなって思ったんだけど」
「普通ですよ」
「そうなの? 何か、みんないろいろやってるのに静かに座ってたから心配しちゃった」
「え~、いつもです。学校に来るのがいつも早いから、みんなが来る頃にはやることおわっちゃうんです」
今までそんなことも知らなかったのかと、弘乃さんはちょっとがっかりしました。
「そうなんだ。本とか読まないの?」
「読んでます。でも、先生が教室に来るころには読むのをやめて待っているんです」
「へ~、きちんとしているんだね。今、どんな本を読んでるの?」
山下さんは道具箱を引き出して、1冊の本を取り出しました。
「これです」
「『ユウキ』?」
弘乃さんはパラパラとめくってみました。
「何だか字がいっぱいだね。難しくない?」
「これくらいの方が、読んだ気になっていいんです」
その時、チャイムが鳴りました。弘乃さんは本を山下さんに返しながら、
「また後で見せてね」
と、声を掛けて教卓にもどりました。
「今日、ちょっとがっかりしたことがあったんです」
「どんなこと?」
中山先生が「しいたけドリンク」のキャップを回して開けながら聞き返しました。
「あっ! 先生、ついに飲むんですか?」
「うん。ちょっと今日は冒険をしてね」
中山先生がキャップをひねると、あたりに「しいたけ」のにおいが漂いました。
「何だかすごいにおいだよ、これ」
「本当ですね。ちょっと、私ダメです」
「いやこれはやめておこう」
中山先生はキャップをきつく閉めて、うちわで仰ぎながら
「飲めば元気が出るかもしれないけど、飲む前に元気がなくなるからそこが問題だね。こんな商品売れるの?」
「どうでしょう? 売ってたから売れるんじゃないですか?」
「そうかねえ? それはそうと、何にがっかりしたの?」
「あ、そうでした。実は、今朝、先生に遠くを見るように言われたので、何人かの子供としゃべっているときに思い出して、教室の中をぐるっと見渡してみたんです」
「うん、そしたら、何してるの?って訊かれたでしょう?」
「ははは、そうです。よく分かりますね」
「そりゃ、子供は先生の仕草に敏感だからね」
「ホントそうですね。で、そうやって見ていたら山下さんが教室の後ろの席でぽつんと座っているのが見えたんです」
「ああ、あの真面目できちんとした子だね」
「そうなんです。みんながわいわいやっているのに静かに座っているからちょっと心配になって声を掛けたら、いつも教室に来るのが早くて朝やること全部おわっちゃうんだって言ってました」
「へ~、しっかりしてるからなあ」
「それで、今までそんなことも知らなかったのかって、がっかりしたんです」
「えらいねえ」
「え?」
「そういうことを知って、がっかりするところがえらいよ」
「そうですか?」
「そう。おれなんか全然がっかりしないよ。もう、感性さびついてるから」
「ははは、じゃあ、シューってやりますか? あれ」
「ゴーゴーロク? そうだね、ひとつ頼むよ」
「あはは、じゃあ今度やってあげますね。で、それで思ったんですけど、子供のいろんなことを知るにはどうしたらいいのかなあって。先生に何かいい方法を教えてほしいと思っていたんです。何かいい方法ありますか?」
「う~ん。ないなあ・・・」
「え~、先生、いつも分からないこと意外は全部分かるって言ってるじゃあないですか」
「まあ、その通りだけどね」
中山先生は数秒考えてからこう言いました。
「おれがやっていたことは教えてあげるけど、これがいい方法かどうか分からないよ」
「大丈夫です。先生がやっていたことは私全部やってみたいんです。教えてください」
「じゃあ教えない」
「え~、どうしてですか?」
「全部やるって言うから」
「ダメなんですか?」
「やるかどうかよく考えてからやるっていうなら教えてあげるよ」
「はい、じゃあそうします」
「軽いね!」
「あはは、すいません」
「じゃあね、おれがやっていたのは、毎日、子供ひとりひとりの行動を記録することだよ」
「はい」
「以上、終わり」
「え? それだけですか?」
「それだけ」
「毎日、子供ひとりひとりの行動を記録するんですね」
「その通り」
弘乃さんはちょっと考えてから言いました。
「じゃあ、今日からやってみます」
「軽いなあ!」
「あはは、すいません」
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│毎日、子供ひとりひとりの行動を記録
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